松本剛 「すみれの花咲く頃」 (講談社)

1991年に刊行された松本剛の初単行本が、講談社BOXレーベルで復刊。先月の「甘い水」復刊の時には、天下の講談社が阿漕な商売しやがって、普通に重版しろよと思いましたが、こちらの復刊は素直に喜ばしいです。久々に読んでみても実に良いなあ。甘くて苦くてこっ恥ずかしくて、でも爽やかな青春のひとコマを切り出す松本剛の手際は、本当に見事なもんです。
旧版と比較すると、読切が2本入れ換わっています。新規収録の「なかない渚」「すこしときどき」は初見だったのでそれはそれで嬉しいのですが、できれば既収録作を削らずに追加して欲しかったところ。というか、講談社BOXでは「松本剛全作品復刊プロジェクト」と題して「北京的夏」も復刊するようですが、そこまでやるならもう一声、短編集を出しましょうよ。