ポルフィの長い旅 #52 (最終回) 「この瞬間のために」

愁嘆場から一夜明け、意を決したローズはティファニーの元へ。そして2人の計らいで、ついに再会を果たすポルフィとミーナ、という最終回。ともあれ、無事の再会には胸が熱くなりました。良かった良かった。
しかしきっかり再会の瞬間で終幕し、エピローグを全くやらないというのはまた思い切ったなあ。その後の展開は全て視聴者の想像に委ねられたわけですが、やはり2人でシミトラ村に帰るという方向性にはならなかったんだろうなあ。なんだか収まりの悪い気はしますが、(教育的な正しさやストーリーの結構よりも) 現実ってこんなものだよなあと感じさせる、この作品らしい終わり方ではありました。個人的な妄想としては、ミーナはこのままティファニーのところに残って女優の道、指輪をあげちゃったポルフィは、これが年貢の納め時ってことでローズと同棲しながらパリで整備の仕事を探して、ザイミスはギリシャに帰ってナタリーと文通、という感じでしょうか。

  • ポルフィから、ナットの指輪を左手の薬指にはめて貰うローズ。そんなコテコテな、と思わず突っ込みを入れつつも、せめてもの証が欲しいローズの心情が切々と伝わってくる名シーンでした
  • そして、例え自分から離れていくことになっても、好いた男の幸せを願ったローズねえさんの心意気を、ポルフィはどこまで理解していたのやら (ザイミスは分かってたよね、多分)
  • 土壇場でザイミスに訪れた恋。これぞ神様のくれたプレゼントなのかもしれないなあ

「僕だって、地震が起きなかったらどんなに良かっただろうって思う。でもさ、僕等生きてるだろ。ザイミスも、僕もミーナも。ギリシャを出てから、辛いこともいっぱいあったけど、楽しいこともあった。だって飛行機に乗ったんだぞ! すごいだろ。……だからさ、上手く言えないけど、そういうのって生きてるからできるんだと思う。生きてればきっと……ミーナにも逢える」

総括

構成面では、ギリシャ編では堅実な滑りだしだったのが、旅編に入ってから一転してラジカルになり、バランスを崩してしまった印象。そのへんにいる普通の (足りない) ガキであるポルフィくんに一人旅をさせるという基本コンセプトに無理があったのかもしれませんが、向こう見ずな行動で危ない目に遭ってはご都合主義で助かるという、あまり良くないパターンに陥りがちだったのは残念です。しかし、そういった構成面での緩さ=自由度があったからこそ、マフィア回山本麻里安のホラー回のような、突出した出来の回が生まれたのも確かで、スタッフもある程度は覚悟の上で突っ走ったのだろうと思います。
またそれらの回を始め、綺麗事では済まされない大人の世界をギリギリまで踏み込んで描写していたのが、実に刺激的で面白かった。なにせマフィアの粛清劇あり、性的虐待あり、娼婦あり、ローティーンの男の子との同居生活にズッポリはまる20代女性あり……。子供のポルフィはそれらにまったく気付かないわけですが、まさしくポルフィの視線から大人の世界を垣間見た子供の視聴者たちが、大人になってからこの作品をどう振り返ることになるのかは、非常に興味深いところです。名作劇場としてアリなのか、求められているのかという点を含め、手放しで褒める訳にはいきませんが、個人的にはこの名作劇場史上類を見ない挑戦の数々を、最大限に評価しますよ。
作画面では目立つところは少なかったものの、不安定だったコゼットと比べると制作体制は大幅に改善されたと思います。ともかくスタッフの皆様、お疲れ様でした。