地下沢中也 「預言者ピッピ」 1巻 (イースト・プレス)

出る出ると言われ続けて幾星霜、待たされ続けていた単行本がとうとう本当に出ました。ヤングマガジンでギャグ漫画を描いていた地下沢中也 (ギャグ漫画の方も私はけっこう好きなんですが) が、Comic CUEに「兆 -Sign-」という題名で連載していたSF作品。この1巻に収録されているのは2001年発行の Comic CUE Vol. 100 掲載の5話まで。もう6年も前か。
ピッピは地震予知のために作られた人間型のスーパーコンピュータで、入力されたデータから結末を予知し、人々を救うためのロボット。親友、タミオを予知できぬ事故で失ってしまったピッピは、人々を不幸から救うために、この世のあらゆる事象を予知しようとしはじめます。ピッピの確実な予言は人々にとって預言となり、次第にその行動を規定していくようになる、という第1巻。
ラプラスの悪魔を手にした人類。科学と倫理の相克、完全な予知能力とは何か、それが人、社会に与えていく影響は、といった壮大な哲学的、SF的テーマを、きわめて平易に語っていく地下沢中也の力量にまず驚かされます。そして回を追う毎に深度を深めていくドラマの引きの強さ。未収録分もありますし、1巻と題しているところを見ると続巻を出す意思はあるようですが、肝心のComic CUEがあの体たらくですからねえ。状況は厳しいと思いますけど、どうにかして完結までこぎつけて欲しいと思います。