井上和郎 「井上和郎短編集 葵DESTRUCTION!」 (小学館)

"38歳萌えるオヤジ" で全国サンデー読者を震撼させたあの衝撃の読切、「葵DESTRUCTION!」を含む、井上和郎の初短篇集がようやく発売。散々待たされましたが、とりあえず小学館GJ。「葵DESTRUCTION!」シリーズ3作、「古書店夜光奮戦記」、「フルスクラッチ・エイジ」、「音禰のないしょ」を収録。
「葵DESTRUCTION!」を初めて読んだときの衝撃は、今でも忘れられません。「かわいければそれで」を合い言葉に破竹の勢いで領域拡大を続けていた萌えの最前線が、突如週刊少年誌に現れたのですから (コロコロあたりまで含めると、小野敏洋という偉大な先人がいますが)。その後少年誌界きっての変態漫画家として名を馳せることになる作者のキャリアを決定づけたという意味でも記念碑的な作品。飛び道具的なアイデア+藤田ゆずりの少年誌的燃えという基本スタイルも、ここで確立しています。
近作では、中山文十郎とコラボした「音禰のないしょ」も素晴らしい。女に握られるとカタくなる刀、なんてどうしようもなく頭の悪いアイデアに、エロ、燃えをきっちり融合させた読み応えのある作品。井上和郎自身「短編は描くのも読むのも大好きです」と書いていますが、短編の名手ですよね。週刊連載を抱えながらでは、なかなかチャンスがないようなのが残念。新天地かと思われたヤングアニマルあいらんども、現在の所発刊が止まっていますし。