武富智 「EVIL HEART 氣編」 (集英社)

現在ヤングジャンプに「この恋は実らない」を連載中の武富智が2005年にYJで連載し、単行本3巻で打ち切りになった合気道漫画「EVIL HEART」の続編が、300P超の完全描き下ろしという異例の形態で刊行されました。
お話は3巻の続き。夏休みに入り、舞台はカナダへ。久しぶりにお里帰りしたダニエル先生と、ダニエル先生を追うようにトロントの祖父母を訪ねた真知子、ウメ姉弟。カナダに来ても合気道道場に入り浸っているウメを背景に語られていく、ダニエル先生の悲しい過去。そして、その残り火が巻き起すもう一つの事件。今も過去に囚われているダニエル先生を、今度はウメが止める番。
実に面白かった。一章分まとめ読みしたからというのもありますが、ダイナミックかつ緻密に構成されたストーリー展開、そしてダニエル先生の重いドラマと最後に訪れる救済は、たいへん見応えがありました。ウメの武道家としての目覚しい成長も、見ていて気持ちがいいです。武富智の絵も無論いい出来。ここぞというシーンでの印象的なキャラの表情、アクションシーンでのダイナミックな構図。
なぜ完全描き下ろしなんて形態になったのか不思議でしたが、全16話できちんと連載形式に作られているところを見ると、元々はYJに集中掲載するために描き溜めた原稿だったんでしょうか。お蔵入りにせずに単行本を出したYJ編集部は評価しますが、でもこれはちゃんと雑誌に載せましょうよ。実に勿体ない。今からでも遅くないから。
巻末に次章「完結編」の予告。この分だとやはり描き下ろしになるのかな。気長に待ちます。