地獄少女 二籠 #11 「遠い隣室」

オーソドックスで後味極悪な動物系地獄流しストーリーと見せかけて、実は1話まるまるおしおきコント、という超変化球回。
新しく引越したアパートの前で、野良猫を見付ける依頼人、天城志津子 (CV:皆川純子)。ある日その猫の調子がおかしいことに気付いた志津子は、猫を病院に連れて行き、そのまま部屋で飼い始めます。それから程なくして始まる無言電話や憶えのない出前、通販の宅配といった嫌がらせ。犯人は隣室の女性でしたが、アパートはペット禁止なため志津子の方も管理会社に相談するわけにもいかず、追い詰められて地獄少女に助けを求めます。
演出上の主な仕掛けは2点。一つは冒頭の糸引き、夕日、目覚めというシークエンス。もう一つは志津子以外に登場するキャラが、全員地獄少女とその手下たちであるという点 (ターゲットは、志津子と直接接触しない)。しかし、気付かなかったなあ。依頼シーンを冒頭に前置したり、地獄少女一行が依頼人に積極的に干渉していくという第2期の演出傾向を見事に逆手に取りました。脚本:高木登、絵コンテ:大畑清隆、演出:筑紫大介。
依頼人がターゲットを怨むに至った過程をターゲットに追体験させるというのは、ターゲットへのおしおきとしてたいへんいい方法ですよね。普段はコント化していて、それはそれで楽しみにしていますが、これがおしおきの本来あるべき姿なんだと思います。三藁たちが微妙に事態を悪い方に誘導しようとしていたり、スプラッターで露悪趣味全開な描写といった、視聴者が感じる違和感も、全てはおしおきのためという美しいオチ。ぶっちゃけて言えば、第1期のころの出来が良くない脚本を逆手に取っているとも言えます。
さらにそこで、悪人を退治してめでたしという終わり方をしないところがまたいい。ターゲットも実は猫好きで、ルールだから飼えない猫を、それでも精一杯可愛がってきたというのに、越してきたお隣さんはさっさとルールを破って自室で飼い始めた、というターゲット側の事情を、地獄流しが終わった後に知る依頼人。見え隠れしていた依頼人の方の独善的な態度にまできちんとオチをつけ、コミュニケーション不全が産んだ悲劇として、依頼人とターゲットのどちらにも寄らない着地の仕方は素晴らしいです。
今回は全編おしおきコントということで、三藁たちが出ずっぱりでした。輪入道は特に八面六臂の大活躍。そして閻魔あいの宅配少女姿がたいへん良かったです。あんな子に宅配されたら、身に憶えがなくともつい受け取っちゃいそう。