佐藤明機 「楽園通信社綺談」 (コスミック出版)

さあ、ついに復刊されましたよ。巻中のカラー8Pがモノクロになっている以外は、特に加筆修正もない模様。予約しておいたAmazonがいつまで待っても送ってこないので、本屋で買ってきてしまいました。2冊になるけど、まあいいや。
新聞社に記者として招かれ、伝説の都市、ヘヴンにやってきた主人公、メイウルフ。本職は食えない女流作家であるメイウルフが、ヘヴンで様々な不思議な出来事に出会う物語です。
佐藤明機の漫画は、いざその魅力を言葉にしようとすると難しいです。すこし・ふしぎ系のレトロSF・ファンタジーに独特のユーモアが融合した作風。80年代の「メカと美少女」モノの流れも色濃く受け継いでいます。
複雑怪奇な巨大構築物、その周囲をふわふわ飛んでいる魚型の飛行機械、知性化した巨大ネコや様々な物の怪といった不思議生物。それらが一体となったカオスな世界観が魅力です。特に大ゴマで執拗に描き込まれた巨大構築物の俯瞰図は実に魅力的で、余人をもって代え難い才能。佐藤氏本人のサイト (佐藤明機事務所) で公開されている絵 (下の方の×印が画像へのリンクになっています) からも、その魅力の一端が伝わるでしょう。
天野こずえが影響を受けているなんて言われることもありますが (たしかにある程度の影響は感じますが)、あれほど健康的でもなければ間口が広くもないです。もっといかがわしい魅力。
長いこと絶版状態にあり、入手するには古本屋を巡るしかなかったこの本が、再び本屋に並ぶ日が来たのは嬉しい限りです。ぶっちゃけて言うとまたすぐに消えちゃうと思うので、ちょっとでも興味の湧いた人は、この機を逃さずに手に取ってみましょう。
続編に「ビブリオテーク・リヴ」があり、より洗練された佐藤明機ワールドが楽しめるのですが、こちらは中古市場でも入手困難な幻の本でした。その「ビブリオテーク・リヴ」も、なんと来月に復刊されるとのことです。本当に嬉しい。