Cuvie 「ドロテア〜魔女の鉄槌〜」 3巻 (角川書店)

エロくない方のCuvie。3巻目。実在の中世ヨーロッパが舞台。魔女狩り、異端審問、宗教を発端とした戦争をガツガツ描写していく骨太のストーリー展開は変わらずです。
3巻ではドロテアがザクセン大公に謁見。故郷ナウダースの窮状を知り、援助を乞います。少女の純なる思いが隣国の王を動かした、みたいな安い展開に見せかけて、その結果が侵略戦争であり、自分がその加害者に連なることをすかさず突き付ける展開はいいです。一方で、ギュルクとの関係もギクシャク。故郷を守るためなら己が命を投げ出すことも厭わないドロテアと、ドロテア一人を守るためなら故郷を見捨てても構わないと考えるギュルク。口論の末出て行ったギュルクは娼婦のところで夜明かし。
そんな感じで、お話としてはよく出来ていると思うんですが、いまいち盛り上がりに欠けているように見えるのは、ストーリー展開の抑揚が弱いのと、重厚さの出ない絵柄のせいでしょうかね。キャラクターの心理描写もよく出来ているんですが、肝心のドロテアが自問自答で答えを出してしまうキャラなのも抑揚がつかない要因。あと、複雑な当時の国家間情勢もきちんと組み立てられていて、ドロテアたちの行動原理にもちゃんと繋がっているんですが、説明を台詞に頼りすぎている上に馴染みのない固有名詞が多くて、理解するにはかなり辛抱して読む必要があります。
じゃあ盛り上げるにはどうすればいいかと考えた時に、時代背景といい作者の資質といい、ドロテアが悲惨な目に遭う展開が実によく合うよなあと思ってしまう自分は、もう汚れちゃってるんでしょうか。でも、時代背景やドロテアの立ち位置の危うさといったものは常に描写されてきているので、いつそっちに舵を切っても不思議ではないストーリー展開にはなっています。もし打ち切りを喰らったら、掲載誌を変えて思う存分やっちゃうってのもアリ?