入江亜季 「コダマの谷 王立大学騒乱劇」 (エンターブレイン)

こちらはビームコミックスですが、エンターブレインで発表した作品はなく、個人誌として発表した「コダマの谷」シリーズと、「ぱふ」に連載された「フクちゃん旅また旅」の2本立て。両方とも初見でした。
「コダマの谷」は、中世王国時代の王立学院モノ。むしろこちらこそ学舎モノと呼ぶにふさわしいかな。主人公は非常に優秀ながら、なぜか卒業したがらず試験を受けずに留年した学生、ライダー。彼を巡り、お忍びの王子様やライダーをライバル視する良家の子息、その妹の男装の麗人たちが織り成す群像劇が、実に面白いです。
描きたいシーン優先で描いているのか、ストーリーは未整理でちょっと読みにくいところもありますが、密度は高いです。この密度で200P近くかけて掘り下げていくキャラクターたちは、「群青学舎」の方にはない魅力ですね。剣とか魔法とかは出てきませんが、おがきちかLandreaall」の学園編とか好きな人ならいけるでしょう。
「フクちゃん旅また旅」は、父に連れられて世界各国 (たまに日本も) を渡り歩くフクちゃんのお話。各話4Pで全12話。各地の風景がたいへん美しくていいです。もっと大きく見られたらいいと思うのですが、4Pものということで見開きを使えないことと、単行本化にあたって版型が小さくなってしまっていることが実に惜しいです。
荒削りながら、入江亜季の魅力は十分に堪能できる1冊です。